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「会社を伸ばすための経営学」(2022年1月号)を掲載しました

コラム
2022.1.1

「新たな風呂」

深谷のみなさま、新年、明けましておめでとうございます。
 今年、2022年から、いよいよ団塊の世代と呼ばれる人たちが、75歳になっていきます。もちろん、高齢者が豊かで活き活きと過ごせる国は素晴らしいのですが、一方で、いよいよ社会保障においての負担も重くなっていくことは避けられません。また、日本経済においても、コロナからの復興は進む一方で、国際競争力を急激に失いつつあります。
 「新年早々、暗い話をするな!」とおしかりを受けそうですが、実は今日、私が皆さんに伝えたいのはその逆で、今年の過ごし方によっては、日本は、非常に良い国になるのではないかと感じています。
 私はコロナ前の日本経済を「ゆでガエル」の物語のようだと感じていました。カエルが入っている風呂釜の温度が少しずつ上がってきているのに、「まだまだ大丈夫」と入っていたら、カエルがゆであがってしまったという物語です。私たちのビジネスモデル(仕事のやり方)は、もうだいぶ前から時代と合っていないと言われてきました。事実、ひと昔のように、まじめに努力しているだけでは、立ち行かない事業がほとんどだと思います。このままではいけないのですから、「変えれば良い」と言われそうですが、ともすれば、自分よりも前の代から続いていた仕事をいきなり変えることは難しく、また、リスクも高いので、結果的に、このままではいけないと思いつつも続けてしまっているのではないでしょうか。
 そこにコロナが来ました。「コロナはチャンスである」と言っている方もいますが、コロナ禍は人類の敵であり、そんなの不幸でしかなく、決してビジネスチャンスなどではありません。しかし、このような状況から考え方を変える「機会」にはなったと思います。ゆでガエルでいえば、急激に風呂の温度が上がったので、火傷はしたかもしれませんが、とりあえず、風呂の外に出るきっかけにはなりました。
 このような状況下の中、ほとんどの事業主は、「いつになったら元に戻るのだろう」とまた風呂の温度がいったん下がることを期待していますが、それでは状況は変わりません。元の「ゆでガエル風呂」に戻ってはいけないのです。
 そこで、今、私たちがやるべきは、新たな風呂を作ることです。ビジネスモデル、つまり、仕事のやり方を変えることを考えることが必要です。
 先日、山形県のガソリンスタンドの店主から相談が来ました。そこは、街中のガソリンスタンドで、郊外型の広いガソリンスタンドに押され、また、原油の高騰やコロナ禍による経営環境の大幅な変化により、非常に苦しい経営を強いられていました。そこで、少しでも売上を回復しようとコインランドリーを併設したいが投資も大きく、迷っているとのことです。確かに、少しでも売上を上げたい気持ちもわかりますし、従業員を増やすことができない現状においては、コインランドリーの選択もありかと思われます。しかし、投資対効果を計算してみると、10年スパンでもバランスが取れませんでした。そこで、店主と、最終的には何をやりたいのか、どうあるべきなのかを時間をかけて話し合いました。すると、店主は、単純にコインランドリーの小銭が欲しいのではなく、これから街中に高齢者が増える中で、灯油等をご自宅まで運ぶガソリンスタンドの業務を拡大し、重いものが運べないとか、洗濯ができないけど、クリーニング屋に頼めないとか、高齢者の困りごとを少しでも助ける事業をしていきたいと考えていたことが分かりました。そこで、コインランドリーの投資を縮小し、洗濯請負事業を含む「高齢者総合サービス事業」とちょっとだけ考え方を変えてみました。考え方が変わったので、例えば、シャツ1枚というよりも1袋いくらという金額で請け負うなど、様々な部分に変更があったのですが、見事、大型補助金も獲得し、着実に進んでいます。店主は新たな風呂を見つけたのですね。私たちも、今年は新たな風呂を創り出す年としていきませんか。

株式会社ディセンター代表取締役 折原 浩

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