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「会社を伸ばすための経営学」(2022年3月号)を掲載しました

コラム
2022.3.1

将来への「仕込み」

深谷の皆様、こんにちは。
 コロナ禍の先が見えない現在ですが、この原稿を書いている2月上旬において、再び行動制限がかかっています。命には替えられませんし、社会の危機ですので致し方ありませんが、経済・経営面を考えると本当に痛いですね。講演などの私の仕事も、キャンセルが相次ぎ、今期の売上を見ていると大打撃です。
 スケジュールが空いたので、普段できない講演テキストの作成や、ちょっとしたITソフトの勉強、気になる分野についての研究など、いわゆる「仕込み」をして過ごそうと思っていたのですが、特に遠方の普段お会いできないお客様からの相談が入り続けており、意外と忙しく過ごしています。ご相談の内容も、現在起きている危機についてではなく、将来に向けた話がほとんどです。社長職の皆さんは、コロナ禍における対策を十分したうえで、この動けない、じたばたしてもどうしようもない時間に、次の計画を考えたり、緊急な仕事に追われて普段できない「必要かつ重要な仕事」を行おうと考えているようです。
 先日も、しばらくご無沙汰してしまっている地方の会社の社長様が、突然お電話をかけてこられ、「特に用事があるわけではないのだけれどZOOMで話したい」とお申し入れがありました。優秀な社長様ですから本当に「用事がない」わけありません。私はあわてて日時を決め、面談をしたのですが、本当に緊急の「用事」はありませんでした。しかし、次のビジネスチャンスの話、将来的な組織の在り方、ご自分の体調と後継者問題、現在自分たちが所属している業界の将来的な脅威やリスクについて、数時間お話しされました。何とか、一つでも二つでもヒントになるご提案ができればと思っていたのですが、正直言うと、既にだいぶ研究され、深く考えておられていたようで、考察がとても深く、私の方が勉強になったり、気づきを得たりすることが多かったです。
 社長職の責務は、現状をマネジメントすることはもちろんですが、一歩も数歩も先を行き、「将来への仕込みをすること」が重要です。
 現在の状況をよく観察し(O)、状況判断し(O)、意思決定し(D)、行動する(A)、そしてその結果を観察し…というOODAサイクルが注目されていますが、OODAからのカイゼンだけで、この危機が乗り越えられるのか、疑問と不安を持っている方も多いかと思います。そこで、経営の基本であるPDCAサイクルを再び回すことを考えるのですが、これだとどうしても仮説や計画(P)がなければスタートできません。私の周りにいる多くの優秀な社長は、この時期にPの基となる発想を求めて努力しているのです。
 また、仕事や用事を「重要、重要ではない」、「緊急、緊急ではない」の2軸で整理した場合、通常時であればどうしても「緊急かつ重要な仕事」に追われてしまいます。これは一見正しい行動のように思えますが、常に忙しいがあまり、「緊急ではなく重要な仕事」が長い間行われていないと、それも重要なのは変わりませんから、チャンスロスも含め、重大な過失や問題が起こってしまいます。
 したがって、優秀な経営者は、「緊急ではなく重要な仕事」を少なくとも心の中では最優先に考えていることが多いものです。私に連絡をしてきている社長様方は、これを素で実践されているのだと思います。
 行動を抑制してしまうのは「不安」だと言われます。先行きが見えない現在、経営面にも多くの不安があることだと思います。しかし、渋沢栄一翁も「行動することこそ経営者の資質」を言っておられます。この時期に、感染症対策をしながら、「緊急でなく重要な仕事について考え、不安の中、勇気をもって一歩踏み出す」を実践してみませんか。

株式会社ディセンター代表取締役 折原 浩

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