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お知らせ

「会社を伸ばすための経営学」(2022年6月号)を掲載しました

コラム
2022.6.1

「ある深谷青年に教えられたこと」

 深谷の皆様、こんにちは。先日、とてもうれしいことがありました。
 3年前、「渋沢栄一に学ぶ創業塾」において、十代で参加した青年が、創業プランを届けてくれたのです。
 深谷は全国的にみて若いとはいえ平均年齢30代後半の創業塾において、過去を見ても最年少の参加者だと記憶しています。
 最初は何となく参加したようですが、創業塾が進むとともに前のめりになっていき、最後は、みなさんの前で堂々と自分の疑問を私にぶつけてきた青年です。最終日には、「人生観が変わり、今後の目標ができた」と決意の表情で帰っていったのですが、正直、もろさも感じられ、心配もありました。その後、多少の交流はあったのですが、3年かけて自分の起業プランを作り、私にぶつけてきたのです。
 正直言って、まだまだ甘いプランです。でも、今までは、どこかの起業本に書いてあるような簡単に儲ける方法のようなものをうのみにしていた彼が、「自分の得意なこと、興味の持てることは何か?」「自分が喜ばせたい、または助けたい人は誰か?」「事業を運営するにおいて必要な利益をどのように取るのか?」「この事業を本当に自分と一緒にやってくれる人は誰か?」など、私から与えられた課題を自分の頭でとことん考えたプランでした。
 すぐに、良いところ、甘いところを指摘し、またまた多くの課題やそれに取り組む宿題を出しましたが、厳しいことを言ったにもかかわらず、それを嬉々として聞いて、更に、非常に良い質問や意見を私に返してきました。
 正式な仕事ではないですが、もちろんプロとして手抜きはできませんし、私がリスクを指摘できなければ、ただでさえ難しいオリジナル事業の成功確率を上げることはできませんので、私も必死です。
 でも、私にとっても、本当に良い時間でした。
 まず、認識したのは、私も年を取ったということです。これは自虐的な意味ではなく、アドバイスしている彼が考えたり、反論してきたり、やりたいことのようなことを私も「若いころなら」考えただろうと思ったのです。
それを半分否定しながら、半分応援している自分がいる…自分が、若いチャレンジャーからいつの間にか守りに入ってしまっていると反省してしまいました。
 また、私は今、「コロナ後の経営」について各所で講演していますが、私が考えた「新しい経営」でさえ、20代前半の若者が見ている社会とは乖離していたのです。私が考える以上に日本人の、特に若い世代の価値観は大きく変化していることに気づかされました。
 そして、今まで、「自分がどうしたら社会に貢献できるのか?」とばかり考えていましたが、50代に入る今年からは、「自分の経験等をどのように伝えるのか、使ってもらうのか」も同時に考えなければならないと痛感しました。
 「人に教えることで、自分の学びにつながる」とはよく言いますが、正直、私の休日に土足でいきなり踏み込んできて、「寝てる場合か!」って喝を入れられた気分です(この青年は礼儀正しく、情熱と常識を持った素晴らしい深谷人です)。
 実は気が付いたことがもう一つ。ここ数年、渋沢栄一翁の研究ばかりしていたので、今回青年にアドバイスしている内容が、渋沢栄一翁の言葉にとても似ているのです。寝ても覚めても渋沢のことを考えていると自然に乗り移ってしまっているのかもしれません。おそらくこれが渋沢栄一翁の言うところの「習慣」なのだと苦笑いしてしまいました。
 このように渋沢栄一翁の魂が、生誕の地、深谷で、若者たちに芽吹いていく…今回のエピソードはとても小さなことですが、このような青年が一人二人と出てくると深谷の未来は明るいですね。

株式会社ディセンター代表取締役 折原 浩

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