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「会社を伸ばすための経営学」(2022年12月号)を掲載しました

コラム
2022.12.1

「彦根のカレー屋さん」

 深谷の皆様、こんにちは。私は今、全国講演行脚の真っ最中です。一番の話題は、「コロナ禍後の経営モデルをどのようにするのか?」といったもので、全国の小規模企業が模索しています。
 つい先日も、滋賀県彦根商工会議所において講演をしてきました。午後からの講演だったのですが、早めに彦根入りし、お城をまわったり、街中を散策したりしながら会場へ到着しました。講演前に腹ごしらえしようと会場付近で飲食店を探したのですが、中心市街地なのにも関わらず、飲食店が休んでいたり、カフェがランチ営業をやめてしまっていたり、ちょっとした料亭のようなところが軒先で弁当販売をしていたりしていて、平日ランチを食べる場所がなかなか見つかりません。
 せっかく彦根に来たのにコンビニ弁当や冷たい弁当を食べたくはなかったので、更に探すと、古い店舗を改装したようなカレー屋「ジャンゴ」を発見してさっそく入店してみました。
 若い方が創業したようで、入り口が古民家風、とてもカレー屋に見えないおしゃれな店内です。素晴らしい笑顔の心地よい接客でカウンター席に案内されると、そこにはシンプルなメニューがありました。
 メニューは基本3種類。2種盛り1,100円、4種盛り1,500円、数量限定カレー1,300円です。カレー屋なのに、おそらく1,300円程度の比較的高めな客単価がとれるビジネスモデルになっています。では割高感を感じるかというと、カレーは、ワタリガニのココナッツカレーや四川マーボ豆腐カレーなど、オリジナルカレーも含め7種類から選べ、どれもドリンク付きなので、納得のお値段といった感じです。欲張りな私は迷わず4種盛りを頼んでしまいました。
 運ばれてくると、大きなお皿の中央にご飯が盛り付けられており、周囲に4種類のカレーとサラダがワンプレートで盛り付けられています。「これでは食べているうちに混ざってしまう」と思いましたが、それもウリなのでしょう。さっそく、1種類ずつ食べてみると、どれも飛びぬけて「おいしい!」というわけでもありませんが、全て標準以上のお味です。カレー専門店は、インド風のものも多いのですが、ここはいわゆる日本風です。彦根の街並みとも合っていて、食べやすかったです。
 私はいわゆる「招き猫」で、私が入っていると急にお店が混みだすことが多いのですが、私が入る前は1人だけだったお客様も、このころになってくると20席ほどある店内がほぼ満席状態でした。しかし、基本ワンプレートなので、店内に1人、調理場(カウンターから見える状態になっています)にも一人で、十分回っていました。テイクアウトにも対応していたことには驚きましたが…
 日本人はカレーには思い入れがありますから、ここが日本一のおいしいカレー店だとは言いません。でも、誰が食べても標準以上においしいと感じられ、納得してランチで客単が1,300円以上とれ、2人でオペレーションできるカレー店。カレーですから、数種類用意しておけば組み合わせでバリエーションが組めますし、仕込みを十分にしておけば、少ない人数でも回していけます。一つ一つのカレーにこだわりがあり、おそらく手の込んだ手作り、ちなみにラッシーも自家製のようです。このように、手をかけるところはこだわりぬき、効率化できるところは効率化しています。もちろん、支払いも電子払いOKです。客数も数えたわけではありませんが、ランチで50~60(テイクアウトを入れたらそれ以上だと思います)です。
 近年、若手の創業において顕著に大きな変化が見られます。既存のカフェとか飲食店や小売ではなく、今までになかったような工夫をした効率的で価値のあるビジネスモデルでの創業です。これはある意味、現在の経済状況における危機感から生まれたものだとは思いますが、先輩経営者も、ひと昔のような「今の若者は…」ではなく、このような優秀な若者に学ぶことで、地域経済の復活につながるかもしれません。

株式会社ディセンター代表取締役 折原 浩

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