「会社を伸ばすための経営学」(2024年10月号)を掲載しました
「メリットの無いこと」
深谷の皆さん、こんにちは。
実は私ごとなのですが、先日、本(「理想の経営」有隣堂)の出版会をさせていただきました。当日は嵐の中だったのですが、35人ほどが来てくれました。来てくれた方、ありがとうございます。そして、残念ながら来られなかった方、次回、またお願いします。
実は、今回の開催は迷いました。というのも、現在、このような私的な事で人を集めるのはどうなのだろうかと考えてしまったのです。当日の天候や、準備段階での煩わしさも、その考えを後押ししました。別に収益が出るわけじゃありませんし、来た方も何かを持ち帰れるわけじゃありません。つまり、損得で考えれば損ということになります。
でも、結果は大成功。参加者の満足顔を見て、やってよかったと心から思いました。来るときは、不安顔だった方も、良い笑顔で帰っていきます。何人かからは、お褒めの言葉も頂きました。
ふと、渋沢栄一の言葉を思い出しました。渋沢は「儲かるとすぐに分かるような仕事は面白くない。すぐには儲からないかもしれないけれど、無形資産をつくるような、人の喜ぶ仕事をするのだ」と言っています。この場合がまさにそうで、確かにすぐには誰も得をしないように感じます。でも、会の参加者は、全員私の知り合いです。だから何なのと言われるかもしれませんが、私なりの基準で面白い方に来ていただいていると思いますし、実際にさまざまな業界で活躍されているか、これから必ず活躍される方々です。こういう方々とのネットワークは貴重かと思います。それに、その場で話される話題は、確かに明日から使えるというものではありませんが、仕事をする上での発想のヒントになるかもしれません。そう考えると、貴重な「無形資産」を得る機会なのです。
渋沢は「無形資産は、有形資産とは違い、使えば使うほど増えていく」と言っています。有形資産とは、お金とお金で買えるものです。これらは基本使えば使うほど減っていきます。でも、無形資産は違います。例えば、信用は使えば使うほど増えていきますし、ネットワークも使えば使うほど増えていきます。技術だって使えば使うほど向上していくものでしょう。ちなみに私は、技術は教えることで向上していくと思っています。
こういう縁をつくるのは、めんどくさいですし、意外と難しいものです。何しろ、メリットが見えないのですから。でも、「無形資産を育てることこそ経営だ(渋沢栄一)」と考えれば、力も沸きます。最近、こういう集まりが少なくなってきています。でも、そういう時には、是非、勇気を持って参加してみてください。今はともかく、数年後にきっと役に立つはずです。
皆さんも、たまには、こういう「メリットのない事」に力を注いでみませんか。
株式会社ディセンター代表取締役 折原 浩