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「会社を伸ばすための経営学」(2026年6月号)を掲載しました

コラム
2026.6.1

「値上げと「価格」の話」

 深谷の皆さん、こんにちは。6月になると、今年も半分近くが過ぎたのだと感じます。年始は「まだ先」と思っていたことが、気づけば目前に来ている。小規模事業者の方にとっては、上半期の数字が少しずつ見え始める時期でもあります。
 最近、いろいろな事業者の方と話していて、特によく聞く言葉があります。それは、「売上はあるのに、利益が残らない」という話です。実際、ここ数年で状況は大きく変わりました。原材料費、燃料費、人件費、電気代、どれも上がっています。以前と同じ価格で商売を続けていては、利益が減るのは当然です。しかし、頭では分かっていても、「値上げ」はなかなか難しいものです。特に小さな会社の場合、「お客さまが離れるのではないか」という不安があります。長年付き合いのある取引先ほど、なおさら言い出しにくい。「このご時世だから仕方ない」と思いつつ、自分だけが我慢してしまう。そういう話をよく耳にします。
 先日、市内の飲食店の方と話しました。その店では、材料費の高騰が続き、「このままでは厳しい」と感じていたそうです。しかし、値上げには抵抗があり、しばらく悩んでいたとのことでした。そこで、その方は思い切って、一部メニューの価格を見直しました。ただし、単純に値段を上げただけではありません。なぜ値上げをするのか、どんな材料を使っているのか、どういう思いで商品を提供しているのかを、店頭やSNSで丁寧に伝えたそうです。結果として、多少客数は変動したものの、大きく落ち込むことはありませんでした。むしろ、「ちゃんと説明してくれて安心した」「これなら納得できる」という声もあったそうです。
 ここで重要なのは、「価格」だけではなく、「価値」を伝えたことだと思います。日本では、長い間、「良いものを安く」が美徳とされてきました。それ自体は素晴らしい考え方です。しかし、今の経済環境では、それだけでは経営が続かなくなってきています。無理に価格を据え置けば、最終的には事業者自身が疲弊してしまいます。経済の世界では、価格は単なる数字ではなく、「価値の表現」と言われます。つまり、安すぎる価格は、「自分たちの価値を低く見積もっている」ことにもつながります。もちろん、ただ値上げすれば良いという話ではありません。お客さまに納得していただく努力は必要です。しかし、その努力をせず、「安くすること」だけで勝負を続けるのは、これからますます難しくなるでしょう。
 最近は、大企業でも「値上げを前提とした経営」に変わり始めています。これまでの日本経済は、デフレ、つまり「価格が上がらない時代」が長く続いていました。しかし今は、インフレ傾向が強まり、「値上げできるかどうか」が経営の重要なテーマになっています。これは、小規模事業者にとっても無関係ではありません。むしろ、小回りが利く分だけ、価格やサービスを柔軟に見直せる可能性があります。大きな会社ほど、すぐには方向転換できません。そこは、小規模事業者の強みでもあります。6月は、数字と向き合う月です。売上だけではなく、「利益が残っているか」「この価格で続けられるか」を、ぜひ一度確認してみてください。

株式会社ディセンター代表取締役 折原 浩

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