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「会社を伸ばすための経営学」(2022年10月号)を掲載しました

コラム
2022.10.1

「創業セミナーの新たな使い道」

 深谷の皆様、こんにちは。秋も深まってまいりましたね。私たちにとって、秋と言えば、イベントやセミナーシーズンです。近年続いていたコロナ自粛の影響もあり、本年はイベントや実地セミナーが多く組まれているように思えますし、参加する皆様もコロナに気を付けつつも活き活きとした表情ですね。
 深谷商工会議所においても数多くのセミナーが催されていますが、私が担当する中でも大イベントが創業セミナーです。創業セミナーは文字通り、創業を志す方向けのセミナーですが、例えば埼玉県だと坂戸では、既に創業した方や、創業者の家族の参加が目立ちます。もちろん、地域性もあり、また、参加人数に余裕がなければできないのですが、創業セミナーなのに、3年以上、毎年のように参加している方もいます。理由を聞くと、毎年定期的に新たな知識の吸収と既存の知識の確認に来ているとのことです。
 実は、これは素晴らしい利用方法だと思います。
 まず、創業セミナーでは、基礎的なところを扱うので、ここを繰り返し学ぶことで、使える知識となります。重要な部分は仮に同じ内容を聞くことになりますが、創業前と1年目、更に数年経営をしている時とでは立場が違うので、新たな感じ方や理解をすることでしょう。また、講師の方も同じ方が来ていると分かっているので、事例を変えたり、トレンドを入れたり、テキストをバージョンアップしたりして、毎年変化させます。したがって、純増の新たな知識を入れることもできます。
 そして、何よりも良いことは、定期的に行う「習慣」となることです。渋沢栄一翁も「良い習慣を付けよ。習慣は人格を変える。また、習慣は唯一人の身体にのみ付随しているものでなく、他人に感染するもので、ややもすれば人は他人の習慣を模倣したがる」と言っているとおり、経営にも、習慣をつくり上げていくことが肝心です。坂戸の方々は、創業セミナーを経営の習慣の一つにしているのですね。
 他にも効用があります。それは、コミュニティの形成です。創業して数年たった方が創業セミナーに参加することで、定期的な同窓会のような形になります。経営について勉強する場ですので、経営の悩みを共有したり、お互い刺激を受けたりすることでしょう。創業希望者からは原点を思い出させてくれる貴重なものだと思います。これから創業する方も、地域の創業の先輩と知り合えたり、その経験を聞いたりすることは貴重な場となります。コラボレーションだって一部生まれてくることでしょう。
 実は、この事例で学ぶことはもう一つあります。それは「商品の転用」です。創業セミナーは「創業希望者が創業に必要な知識を得るためのもの」ですが、これは想定してたものとは「別の使い道」です。このように商品・サービスは、それ自体は変化がなくとも、別の利用者へ、別の付加価値を見出して販売できる可能性があります。
 仮にこの発想ができれば、既存商品であっても、新たな市場が見えてくるわけですから、大幅な売上げアップも期待できます。創業セミナーの想定顧客が「創業希望者」のみと考えるのか、それに加え「スタートアップ事業者」や「後継者」と考えれば、市場が一気に数倍に代わります。また、例えば、卒業者の中から専門家職で起業した方を、講師サポートで参加してもらうなど、「商品・サービスをちょっと変える」だけでも、大きな付加価値を生みだすかもしれません。この場合、対象となる新規客は利用方法に気づいていないので「提案」することが必要となります。
 皆さんも既存商品・サービスの新たな使い道を探して、新たなお客様に提案してみてはいかがでしょうか。

株式会社ディセンター代表取締役 折原 浩

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