「会社を伸ばすための経営学」(2022年11月号)を掲載しました
「商店のeコマースへの挑戦」
深谷の皆様、こんにちは。
先日、東北の地方商店街を訪問いたしました。全国的に商店街はどこも苦戦している傾向がありますが、地方(とは言っても中核都市です)の商店街の崩壊は特に顕著で、コロナの影響もあってか、ほとんどの店がシャッターを降ろしていました。
相談に入った店舗は3代続く洋品店で、コロナ禍での来店客数は1日平均3組程度だそうです。相談内容は、eコマースを中心に売上強化を行う方法についてでした。
社長は、数年前に私のセミナーを受けており、その後、その内容をヒントに必死にeコマースを構築し、何とかニッチな分野で売上を立てていました。ところが、正規のルートから仕入れていなかったことがメーカーに判明してしまい、卸元への出荷停止などの厳しい処置が施され、現在も未来も真っ暗な状況です。数年前からこのリスクはわかっていたので、当時から多くの商品に手を出していましたが、他にヒット商品が生まれていません。そこで、社長は藁をも掴む思いで私にeコマースの方法及び販売促進を相談したわけです。
ここでの問題点は大きく分けて2つあります。
一つ目は「(eコマースで)売れる商品が無い」と言うことです。
eコマースを考える時に、売り方や販売促進方法を学ぶことはもちろん重要です。しかし、そもそも、今まで店舗で売っていた商店がeコマースに向いている商品を持っていることは稀です。この商店の場合、たまたま息子さんの趣味がニッチかつコレクターが存在していたので、その商品だけがeコマースにおいて売れていましたが、従来型の「仕入販売」、ともすれば「転売」の考え方が根底にあるため、それ以外の商品は競争力が無く、売上も微々たるものです。商店街において近隣客に販売していた時は、その「地域(商圏)」において差別化すれば良いのですが、ネット販売になると全国大会(世界大会)に出場するようなものです。オリジナリティが少なく、手に入れやすい商品では、価格勝負以外に勝ち目はありませんし、特別に安く仕入れる方法があるなどの武器が無い限りは価格勝負にも持ち込めません。
二つ目は「ビジネスで得られた情報の活用がなされていない」ということです。
近年DXという言葉が独り歩きしているように思います。ともすれば、「IT機器を導入して販売を強化したり、効率化を目指したりすること」と認識されがちですが、DXとはそれだけではありません。DXの大きなポイントは「情報の活用」なのです。IT機器を導入することで、今までは取れていなかったデータが手に入ります。例えば、店舗で販売していたころのレジでは、売上データしか取れなかったのが、eコマースになると顧客情報や売れている時間帯、検索キーワード、比較検討した商品、過去の購買動向などのデータが蓄積されます。それらを活用することで効率的な販売促進や次の取り組みへの貴重な「気づき」を得ることができます。
相談の結果、この社長は何かヒントを得たようです。私も、いくつかの考えや事例を伝えました。短時間で結論が出るような課題ではないのですが、私との相談中にも社長の頭の中にはいくつかやるべきことが見えてきたようです。
店舗への集客がますます難しくなっている時代だからこそ、eコマースでの販売が重要になってきました。ちょっとしたことで大きく成果が変わってきます。商工会議所などに相談しながら、ポイントを外さない挑戦をしていきましょう。
株式会社ディセンター代表取締役 折原 浩