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「会社を伸ばすための経営学」(2022年9月号)を掲載しました

コラム
2022.9.1

「セミオーダーシステム」

 深谷の皆様、こんにちは。
 先日、ユニクロ銀座店に行ってきました。今、話題のセミオーダーを体験するためです。
 正直、ユニクロブランドのスーツを買うには、抵抗があったのですが、結果的にスーツとYシャツ2着ずつ、ベルト1本を購入してきました。さすがユニクロ、と言えるほど、ビジネスモデルが素晴らしかったです。小さな事業でも参考になる部分がたくさんありました。
 オーダーメイドは、お客様個々に対応するビジネスモデルですが、ユニクロの「セミ」オーダーメイドは、データを活用し、パターン分析されており、個別対応する部分は最小限に留められています。
 スーツは2タイプ、それぞれ3色のラインナップしかありません。また、サイズも基本S、M、L、LL、3Lくらいです。オーダーメイド部分は、例えばスーツ上では、袖と背の長さの2か所で、それもそれぞれのサイズで1~2センチごと3織くらいなので、9通りです。ですから4サイズ×9通りの調整です。もちろん、上下の組み合わせもありますから、こんな単純ではないとは思いますが、少なくとも、あらかじめ、対応できるターゲットとオーダーを絞り込んでいます。
 オーダーメイドですから、カスタムに1週間ほど時間がかかると言いますが、ユニクロの販売規模から考えると、ほとんど既製品のノンカスタムで用意できるのではないでしょうか。実際、私のスーツ上は手直しが必要ありませんでした。もしかしたらわざと時間をかけて、「カスタムしているぞ、とアピールしているのでは」と疑いたくなってしまうほどです。
 商品は、非常に良いと思います。機能的で、品質も悪くなく、デザインはシンプルです。ひと昔前は、様々なスーツをそろえていた私でも最近は選ぶのが面倒になって、どこかのIT企業経営者のように同じ服をそろえてローテーションを組む傾向があります。インナーとかで工夫をすれば、シンプルで機能性の高いスーツは重宝すると思います。
 また、ITを適切に活用しています。セミオーダー発注者には半強制的にアプリをダウンロードさせ、体のサイズや買い物傾向などを入れていきます。このような場合、入力が面倒なのですが、担当店員さんが、基本的なデータをつくり、それを私のスマホに読み取らせるしくみです。これであれば、面倒ではありません。担当者がデータをつくっている間に、アンケートに回答させるなどの念の入れようです。
 特筆すべきは、接客の良さです。正直言うと、私は、服を選ぶのが苦手です。何を選べば良いかわかりませんし、年々悪化する体型や鏡に映る現実を直視したくないからです。そんな私にも、適切な距離感で接し、適切に提案しながら押しつけもせず、IT操作なども一緒にやってくれます。セミオーダーは、事実上、選択の連続ですが、何を先に選ばせれば選択しやすいかの順番も決まっているのでしょう。私は、1時間くらいかかりましたが、「段取りが悪く時間がかかりすぎた」という印象は全くありません。むしろ、「一生懸命手間をかけてくれた」との思いが強かったです。商品自体は、既製品のベルトも含めて、無料で自宅に届きます。支払から配送までの管理もアプリで行います。これらはお客様の負担も軽減していますが、業務効率も良いのではないでしょうか。
 ①シンプルだけど高品質なベース商品を用意する、②個々の顧客に対応しているような印象があるけどパターンを絞り込める、③接客でお客様に自分だけ特別だと思わせる、④ITを活用して業務全体を見直す、これは、小さな事業でも十分できると思います。
 気を付けなければいけないのは、これらをバラバラにやっても効果が薄いということ。やはり、ビジネスモデル全体を俯瞰して見ながら、全体的に改革をすることが大切なのですね。

株式会社ディセンター代表取締役 折原 浩

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